CACA現代アート書作家協会 特別顧問 岡本光平

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岡本光平展 空海とその世界 6月30日(水)~7月6日(火) あべのハルカス近鉄本店 タワー館 11階 美術画廊

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空海は宗教家であり、哲学者であり芸術家である。
 古典と現代をうまくミキシングさせた当時の言わば現代アーティストでもあった。
 アーティストと言うのは表現者であり、一言で言うならばそれまで誰も見たことも聞いたこともないものを形にして見せるエンターテイナーであるということだ。
 空海は、密教という当時の中国大陸で最新にして神秘的な汎ユーラシア的世界宗教を根っこから引き抜いて日本に移植させ、さらに自分のオリジナリティーを加えて世間をあっと言わせる芸術的センスがあった。  
 その一つは神護寺で主催した日本初の「灌頂」という儀式のイヴェントであり、さらに京都東寺の密教仏を立体曼荼羅で見せたデモンストレーションだった。日本に初めて不動明王を登場させたのも空海だ。京の都の人々は、度肝を抜かれたに違いない。
 仏像や曼荼羅とともに書を礼拝の対象としたのも空海がさきがけである。
 空海にとって書は余技以上のものであり、人生の最大の武器でもあった。現存している書跡の数は、古代における人物にしては例外的と言えるほどに多い。1200年の歴史の荒波を越えて、大切に守られ続けてきたことは奇跡と言える。
 空海の書の技術技量を専門的に語ることは、もどかしく容易ではない。その書跡は日本最高峰であるだけでなく、中国最高峰の書聖王羲之や顔眞卿と堂々と肩を並べる。それどころか今まで誰も書きこなすことがなかった「雑体書」という特殊な古代文字をヴィジュアル的に自在に使いこなしたり、一方で「破体」という臨機応変に意表を衝く書体の組み合わせで、読む相手があっと驚くアドリブの手紙が書ける才能などは王羲之や顔眞卿にもなかったものだ。
 残されている空海の筆跡は、何一つ同じ調子の書きぶりがない。目的やシチュエーションによって実に多彩な書き分けが成されているのは驚異的であり、そのような書き手は前代未聞のことである。
 ライバル最澄に宛てた三通の手紙が残されているが、見事に書体書風のすべてが異なる。天才王羲之の手紙の書ですらここまでの大きな変化はない。王羲之は書がすべてであるが、空海の書はあくまで宗教家としての体の一部であるからマルチなスーパー天才と呼ぶしかない。
 ちなみに個人的感想であるが、先の最澄に宛てた手紙の1通め「風信帖」の復元模写がすべての古典書道史上もっとも難しい。わかっていても書けるものではない。
 江戸時代までの日本は、通信手段が書簡など、なにぶんにも筆文字以外にはなかった。空海の時代はまだ書がマニュアル化されておらず個人技の時代だった。  
 公私を問わず、すべてのコミュニケーションは、文章を書く“ 書 ”で始まる。それによって人物の器量は推し量られ、会う以前の第一印象も決まる。書と文章は全人格そのものだった。
 空海のその文章力は当時において群を抜いていた。漢文の文章が書けるだけでもたいへんな存在だった時代に、日本人、中国人を問わず、文章で人を酔わせ敬服させる力があった。知識の源である古典からの文言を、綺羅星のように引用して散りばめることができる抜群の博識が空海にはあったからだ。そしてそれを書きあらわす圧倒的な書の技量は、相手を唸らすに足るまさに“ 鬼に金棒 ”だった。
 一介の無名の僧侶から人生を切り開いていった空海の鍵は、その卓越した文章力とたぐいまれな書の技量があればこそだった。
 書が上手いということはどういうことか。上手いだけで人々を魅了し尊敬を集めるかと言うと、そこが書の面白さと奥深さで、技術の上手さはまだ入口なのである。  
 書は書き手の究極の全人格をあらわすものだとすると、そこでもっとも大事なことは品性と格調だと考える。学識と哲学に裏打ちされた空海の書にはそれが備わっているからこそ、1000年以上も人々の敬意を集め魅了し続けてきたことに他ならない。高野山の奥の院の御廟に詣でる人々が絶えないのと同じように、私自身も空海の書に詣でることができる至福の一人である。

岡本光平



2021年個展スケジュール

・3月12日(金)~21日(日) ギャラリー五峯 (東京・下井草)   終了しました

・4月7日(水)~13日(火) 高松三越 (香川県・高松市)  終了しました

・5月21日(金)~26日(水) サロンドエス (東京・銀座)  終了しました

・6月30日(水)~7月6日(火) あべのハルカス (大阪・天王寺)





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